武尊は本当にテクニックが無いのか

またまた予想から寄り道です。今回は巷で言われているように、本当に武尊選手はパンチの選手なのか、テクニックは無いのか、その辺の事を考えてみたいと思います。

そもそもキックボクシングにおけるテクニックとは何なのか?という事なんですが、これを定義する事は相当難しい。パッと思いつく選手って皆さんは誰を思い浮かべますか?日本人ならキックから引退した久保優太、またはkー1の野扖正明、または那須川天心、海外ならペトロシアン、シッティッチャイ、スーパーボン、昔でいうとアーネスト・ホースト、ちょっとコアな目線ならセンチャイ、もっとコアならサーマートあたりですかね?

色々挙げましたがそれぞれタイプの違う選手ですね。ただ共通点はあります。全員基本に忠実で、攻防一体の動きをする。メンタルが崩れない。インテリジェンスに長けていて、相手のメンタルを崩すのが上手い。これが私の考えるテクニックのある選手の特徴です。共通点を抽出して残ったものを列記するとこうなるからです。

基本というのはディフェンスに於いては相手の攻撃をもらう距離にいない。攻撃が届く範囲にきた場合は致命的な攻撃をもらわないようによく相手を見て位置をずらしつつブロックやカットをする。

オフェンスでは相手の正面に入っていかない。斜め移動をする。そして下から徐々に上に攻めていく、途中や決定的な局面でちゃんと上下に散らす、対角線の攻撃をする。

そして共通して自分にとって得意な距離を保ちつつ相手の苦手な距離を探る。さらに上の世界ではそれが距離という線ではなく空間として捉えるようになる。実際に上にあげたような選手になると距離という言葉に加えて空間という言葉を使います。相手の得意な空間には入らない、とか。距離、ポジション、空間、先に挙げた選手たちはこの辺の意識がずば抜けて高いです。

それとインテリジェンスが高い。自分に取って今何が危なくて、相手にとって今どの攻撃が一番嫌なのかという事を探る頭脳が長けています。確実にそこを突いて来ます。さらにメンタルも強い。上手く組み立てていても、自分のイメージと違う動きを相手がして来たり、予期せぬ攻撃をもらうと普通は思考が止まります。止まるというか散漫になるというイメージです。これは日常世界でも起こりますよね?予定が詰まっている時に予定をこなそうと頑張っている時にさらに予期せぬアクシデントが起きたり追加の予定が入ると思考が停止しません?それがないんです。あっても一瞬で立て直す。

プロ選手ならこの基本というのをやりきるのがどれだけ難しい事かは分かって頂けると思います。

よくフェイントが上手いとか言いますが、それは誰でもやります。なんならちょっとセンスのある素人でもやります。でも基本に忠実な攻防一体の動きを完遂出来る選手はプロの世界でもほぼいません。動画で世界戦の動きをスローで見せながらこれだけフェイントを入れてます!凄いですね!というのはナンセンスということです。カウンターもそうです。これは素人ではなかなか見れないけどプロならある程度やる人は見ます。もちろんどちらも奥は深い技術なのでピンキリですが。

では武尊選手はどうなのかというと、先にあげた基本に忠実で攻防一体の動きは全部やってます。もちろんメンタルお化け、相手の嫌な攻撃を選んで突いていく嗅覚もすごい。間違いなく武尊選手はテクニックに長けた選手だと確信しています。

武尊選手は基本の動きが先に挙げた選手の中でも特にしっかりしています。何が何でも基本の動きをやり切る。相手がどんなタイプでも必ず基本に忠実にやりきります。それが自分にとって一番最高のパフォーマンスだと分かっているんです。その通りにやれば必ず相手は倒れるし、お客さんは沸いてくれると分かっているんです。これは武尊選手にだけ与えられた才能といっても過言ではありません。最初の例に挙げた久保選手はこの基本に忠実な動きに関してはおそらく日本人で一番の選手だと思います。でも一発の強さが無い。だから基本から外れて自分にとって虚の動きをします。KO率を上げる為に。お客さんに喜んでもらう為に。もし久保優太選手が、基本に徹して冷徹に勝ちだけにこだわれば、大和哲也選手にも勝っていただろうし、ゲーオ選手にも勝っていただろうし、山崎選手も完封していたでしょう。久保選手は日本キックボクシング史に燦然と輝く天才ファイターです。

話すを戻しますが、武尊選手にはその必要はありません。基本通りにやり切れば必ずKO出来るし、お客さんは沸いてくれます。ベストの自分の動きがそのまま見ているものの感動に繋がるんです。これこそが武尊選手の一番の才能だと思います。

次回はここまで読んでも、でもテクニックはないよね、と思う方向けにもう少し踏み込んで武尊選手のテクニックと組み立てを見ていきます。そしてその中から見えてくる武尊選手の弱点と攻略法も。

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