武尊 VS 那須川天心戦を振り返ってみる その3

スポーツ

2R中盤から武尊選手はとにかく圧力をかけて距離を詰め、そしてKOを狙いに行きました。ここからの展開は那須川選手側としても予想していたはずですが、結局この流れが1番那須川選手を苦しめましたね。元々の体格差とパワー差で詰めてくる展開はシンプルですが有効でした。

ただ想像の上は行けなかった。私は事前予想で、勝敗の鍵は結局はどちらのパワーが相手の想像を上回れるかと言いましたが、私の予想と反して上回ってきたのは那須川選手の方でした。

武尊選手はどれほどの攻撃をもらってもダウンする事はないと思っていたはずです。どれだけジャブをもらっても、どれだけ良いカウンターをもらっても、そこに自分の攻撃を被せることが出来ればその時点でKOできるはずだと考えていたはずです。それは半分当たっていて、実際に最高のカウンターをもらったにも関わらず、すぐに立ってきました。ですが少しだけ予想を超えてきたために、ダウンしてしまった。

反対に那須川選手は圧倒的な圧力を受けながらでも、それでも外を取り続け、的確なパンチを入れ続け、3R闘い続けました。それにも関わらず3R終了間際の那須川選手の表情には一切の余裕はなく、あと数十秒あればどうなるのかと思わせるほどの怒涛の展開でした。これはもちろん5Rあったらという話ではありません。そうなれば全体の展開毎また変わっていたはずだし、ルールというのは決まった時点でどちらにも平等なものです。IFもしもの話はスポーツには通用しません。

話を戻します。実際に2R後半から3Rまで何発かは武尊選手の攻撃は当たっていました。試合後のインタビューで、那須川選手は今までやった選手の中では1番圧力が強かったと言っていますが、その時の表情を見るにこれは多分注釈付きで、「ただしフロイド・メイウェザーJr.は除く」だと思います。もちろんエキシビジョンだったので除外したんだと思いますが、このエキシビジョンこそ今回の勝敗の鍵の一つだったと思っています。あの試合で那須川選手はなす術なくやられていますが、実際には一発もまともにはもらっていません。全てガードの上や頭部をかする攻撃のみでダウンを奪われています。つまりは圧倒的なパワー差です。さすがの武尊選手もメイウェザーのパワーの上には行けなかったと言う事です。当然の話ですが。ですがこの経験があったからこそ、那須川選手は武尊選手の圧力とパワーに対応出来たのだと思います。

そしてもう一つの鍵は、ロッタン戦です。ロッタン戦では那須川選手は外も取れず、圧力でも押されて大苦戦しました。この経験も生きたはずです。ロッタン選手はそれこそ武尊級の選手です。ONEのルールでもし戦ったら武尊選手でも勝つ事は厳しいと思います。K-1ルールなら武尊選手が勝つと思いますが。

こうした今までの対戦相手の差が今回の勝敗を分けたのだと思います。もちろんこれまで武尊選手が戦ってきた相手の中にも強敵はいました。例えばペッダムやワンと言った数々の外国人選手は周りが思うほど簡単な相手ではありませんでした。武尊選手がさらっとKOしてしまったため国内では過小評価されていますが、実はそれ以外にもかなりの強豪外国人と武尊選手は戦ってきていたのです。ただそれでも那須川天心ほどの選手は一人もいなかったと言う事です。

終わってみれば内容は実質完封と言えるものでしたが、ゴングがなる直前の那須川選手の顔はとてもそうとは思えない表情でした。武尊選手からしたら完敗とも思える内容ですが、那須川選手としても心理的にはギリギリの勝利だったのではないでしょうか。

もっと細かい部分で言いたい事はありますが、今回はここで終わっておきます。

実は今回の振り返りの記事はあまり書きたくありませんでした。これほどの最高の試合に言葉はいらないというか、水をさすような事をしたくなかったのです。結局のところあの試合を通してどんなやり取りがあったのかは二人にしかわからない事だし、二人にも言語化出来ない事の方が多いでしょう。ただ自分の個人的な事情から触れてみたのですが、どちらも応援していたし、どちらにも負けて欲しくなかった。これはTHE MATCH 2022に出場した全ての選手にも言える事です(シナ・カリミアンは除く)

この試合後のSNS等では勝った負けたよりも二人にありがとうという言葉が一番多かったように思います。もちろん私もその一人です。一番言いたい事はただただありがとう、それだけです。


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